提言
いのちと環境を守る合成洗剤等有害な化学物質を使わない運動の発展を
きれいな水といのちを守る全国連絡会
全国各地で、きれいな水といのちを守るため合成洗剤追放運動に取り組んでおられる皆様の日頃のご尽力に深く敬意を表します。 また、全国連絡会の活動に対しまして、ご理解、ご支援をいただいておりますことに重ねて感謝申し上げます。
さて、合成洗剤追放の取り組みは、市民団体と労働組合が一緒に運動している数少ないテーマで、四半世紀を越える歴史を刻んできました。
この目的は、言うまでもなく“きれいな水といのちを守る”ことを基本とし、きれいな水環境の確保、化学物質による生命の危機的状況に対し安全性の確保などを求め、一番身近で多くの人が使用する洗浄剤の問題に注目し、家庭の排水口から地球環境を見つめ、それらの実践を通じ、合成洗剤追放の運動を進めることにありました。 この間、運動の流れは、全国集会のスローガンを見てもわかるとおり、合成洗剤追放から自然・環境まで幅広く時代背景を写しています。
21世紀を迎え、「20世紀に生まれた合成洗剤を20世紀中に追放できなかった」ことは残念ですが、運動の成果は着実に浸透していると考えます。
今回、朝日新聞で“せっけんと合成洗剤をめぐる記事”が2001年1月8日から2月5日まで5回にわたり掲載され、各方面に大きな反響を呼んでいます。 内容はご存じと思いますので省略しますが、2月1日に全国連として事務局会議・運営委員会を開き、議論をおこないました。個々の記事に対する多くの意見をいただきましたが、全国連としては連載記事の全体を捉えて見解を出すことを確認しました。
個々の事項については、疑問に思うことや考えされられることがありますが、全国連としてここでは、運動の前進を図る観点で見解を出すこととします。
先ず、わたしたちの今日までの運動は、この間の経過を見てもわかるとおり大きな成果を得ています。 運動にかかわってきた方々の努力の賜物であり、自信と誇りを持ちたいと思います。
そのことを前提として、今回のことは、20世紀に破壊された環境を取り戻すため、“きれいな水といのちを守る”運動をさらに飛躍させるための機会にしたいと考えます。
今回、1月8日に記事が掲載された段階で、わたしたちは直ちに問題点について指摘しました。 各地の皆さんも御奮闘され御苦労されたことと思います。記事は大きな反響を呼び連載も5回に及びましたが、それらの結果、一般の読者にとって日常何気なく使用している洗剤を環境問題として問い直す機会にもなったと思います。 このことは、より多くの人に運動を拡げ理解していただくチャンスでもあります。 ぜひ、各地で掲載内容への反論を含め積極的に運動を展開して頂きたいと思います。
もちろんわたしたちの運動をいっそう前進させるためには多くの課題もありますが、今回のことを糧として克服したいと思います。
いま、私たちが暮らす社会主体を覆う新自由主義的な風潮は、儲かりさえすればいいといった短絡的かつ短期的な思考のなかで、強権的な政治を背景に「公共の概念」をことごとく破壊し続けています。
これまで私たちが専心してきた「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放」の運動は、「合成洗剤追放」を始まりとした活動でありながらも、さまざまな議論を経て「きれいな水といのちを守る」という広範な意味を持った全国組織としてこうした時代に抗い続けてきました。
きれいな水環境やいのちを大事にする活動は、一朝一夕に確立されるものではありません。長期的な視点を持って、100年後のためにいま何をするか、次世代のために何を残すか、が問われている「長い旅」のようなものです。
言い換えれば、いまこうした社会状況だからこそ、私たちのような長年にわたり継続的な運動を展開してきた「きれいな水といのちを守る」という思考が、社会に問われているものだと確信しています。
環境の問題や公害の問題、さらには化学物質の問題など、こうした市民が広くつながる運動の重要性な必要性は、今日的な状況を見ればさらにましていると言えます。
いまあらためて、原点に立ち戻り新しい第一歩を踏み出さなければならないと考えるところです。
21世紀は「環境の世紀」といわれ、何としても20世紀に破壊された環境を取り戻さなければなりません。そのためには、環境問題について幅広く地球全体で考え、あらゆる生命を含めた「循環型社会」の構築が必要です。 その中で、この運動を原点から見つめ直し、どう位置付け、どう拡げていくのか。運動に大切な「理論と実践」を、それも情報化社会に適したものが必要となります。 きれいな水といのちを守るため、あらゆる角度から合成洗剤、せっけんを考え、そして学習を深めることが必要不可欠であると考えます。
わたしたちの運動は、誰でも、家庭でも職場でもどこでも始められます。 四半世紀を越える歴史と実績があり、「合成洗剤を使わない」「石けんも上手に、少しだけ」「やさしい暮らしを」と訴えてきました。 きれいな水といのちを守るためこれからも全力で頑張りますので、一層のご尽力をお願いします。